December 14, 2007

■バター戦争

 時は2007年、初冬。後の世に言う『バター戦争』が日本を舞台に勃発した。

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 事の発端は、北海道に本部を持つ『バター生産者連盟』 が、日本におけるバターの生産の調整を始めた事による。彼らは、

「バターは誇り高き生産者が作り出した貴重な食材であり、敬意なく浪費される現状はすでに我々の忍耐の許容範囲を超えている。よって今後一切、バターの供給管理は我々が一元的に管理するものとする。」
 
 と宣言。バターの生産を大幅に削減した上、連盟の方針に従わない畜産農家や小売業者には武力を持って実力行使に出たのである。
 そのためクリスマス・シーズンに向けてケーキの特需に対応すべく、より多くのバターを必要としていた菓子業界はパニックに陥ったのだ。
 『バター生産者連盟』 は北海道の原野の奥深くに広大な本部施設を持ち、その中心部には数百万個のバターブロックを積み上げて作った黄金のバター・ピラミッドが屹立していると言われる。
 彼らが武力行使に出る際の武器はナイフである。もちろんアーミーナイフではなくバターナイフである。しょせんバターナイフなので殺傷能力は皆無に等しいが、そうは言っても金属なので、彼らがそれをキラリと振りかざすと、相手はなんとなく腰が引けてしまうのである。

 しかし一方で、連盟の動きをけん制する対立勢力も存在していた。酪農の本場スイスのジュネーブに本部を持つ、『世界バター解放戦線』 である。

「バターこそ神から授けられた食材であり、世界の平和のシンボルとして世界にあまねく普及されるべきである。我々の行動を妨害しようとするものは、何びとたりとも聖バター神の報いを受けることになるであろう。」

 彼らはこのような宣言を全世界に向けて発信し、世界中でバターの普及活動を行っているのだが、その平和理念とは裏腹に非常にラディカルな側面を持ち、武装化の上、強引なバター消費拡大路線をとり始めた。一説に寄れば近年のクリスマスシーズンにおけるケーキの乱造・乱売は彼ら解放戦線の暗躍があるとも言われている。
 彼らのジュネーブ本部の奥の院にはバターで作られた、高さ10mの黄金のバター女神像が鎮座していると言われている。また彼らの使う武器はバター製の弾丸を使う『バターガン』 である。しょせんバターの弾なので当たっても少し痛いくらいだが、撃たれた人は気持ち悪いのでなんとなく逃げてしまうのである。

 つまり上記の二つの団体は、バター生産を調整しようとするもの、消費を拡大したいものと、ガチンコに利害関係がぶつかり合ったことになる。それがまさに現在、日本各地で起きているバター問題の背景なのだ。
 もし街でバターナイフを持った連中と、ピストルにせっせとバターを詰めている連中とがにらみ合っていたら、それはまさにバター戦争のファイティング・ポイントなのである・・・。


 さて。
 そんなわけで今はバターが品不足になっているらしい事は、少し前からニュースなどでも取りあげられている。そんなバター戦争の余波は、ここ山形にも及んでいるようだ。
 この前わたしが買い物に行った山形市内の某業務用食品販売店でも、レジに張り紙がしてあった。要約するとバターは一人一個まで、しかも店頭には置いてなくて、店員さんに言わないと出してもらえない、と言う事らしい。
 この張り紙にはちょっと度肝を抜かれた。ちょっとしたバター・ショックである。

 しかしながら思うのである。そもそも我々ジャパニーズはケーキを作りすぎてはいまいか、と。
 この時期になると、ノルマを課せられた店員さんや営業さんが血眼(あるいは涙目)になって注文取りをしている光景が目に入る。そうすると我が家でもそうであるが、クリスマス前後には家族各々が義理で注文したケーキで冷蔵庫が埋め尽くされるという現象が発生する。当然食べきれないので、大晦日近くになっても、下手するとお正月ごろでも食べかけのケーキの残骸が累々と冷蔵庫に保管されていたりして非常に見苦しい。
 クリケー(クリスマスケーキの略)は一個だけを大事にみんなで分け合って食べるからありがたいのである。そしてハッピーなのである。義理で買ったケーキを無駄に食い散らかすなど、ホリナ(ホーリーナイトの略)を汚す愚かな行為である。もちろんお金も勿体ない。

 そう考えるとバター問題のひとつの解決策(緩和策)は『ケーキを作らない、売らない』、その一言に尽きる。
 ただしもちろん、この時期の売り上げが直接に生活を左右している町のケーキ屋さんとか、家族のハックリ(ハッピー・クリスマスの略)のために手作りするママとかはどんどん作ってよい。クリケ販売合戦から手を引くべきは、大して美味くもないものを売り上げのためだけに乱造・乱売し、毎年おびただしい余剰ケーキを生み出す元締めになっている大手メーカーなどである。

 今こそみんな、バター戦争終結のために声を上げるべきであろう。
「大量生産のケーキはいらない。」 と。
「シャンパンとケーキは腹八分目でいい。」 と。
「無理に食べたら太っちゃうよ〜。」 と。
 このバター戦争では、飽食の時代に生きる我々の意志の強さが試されているのである。


Posted by woodcat at 21:53:18 | from category: 雑想日記 | DISALLOWED (TrackBack) TrackBacks
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