April 19, 2008

■さびれた街に、粋な眼鏡屋

 コンタクト以外の時は裸眼族だったうちのセニョリータがめがねを買うことになった。
実家の山形市内で似たようなチェーンの眼鏡店が軒を連ねる中、どこで選ぶかと言うことになったのだが、ここはひとつ、勤務先の地元のゴーストタウン、いや違った、少々閑静な商店街にある、老舗の眼鏡店に入ってみることにした。

実はこの眼鏡店、前から気になっていたのである。

ゴーストタウン、いや違った少々物静かな旧繁華街にあって、なぜか突如としてきらびやかな店構えに、田舎町に不釣合いな海外ブランドのロゴマークが並んでいて、店の前を通ったときに「おっ?」っと思っていたのである。

ただ、もしかすると見掛け倒しの可能性も大いにあるから、いざとなったら店員さんに捕まるまえに店を脱出しなければならない。僕はジェイソン・ボーンになりきった心構えで店内に足を踏み入れた。

ところが入ってみて驚いた。

店内には量販店に匹敵するか、それ以上の品物が並び、看板どおり海外ブランドの眼鏡やサングラスがセンスよく陳列されていたからである。

脱出劇の必要はなくなった。
セニョはさっそく眼鏡を試着し始める。ブランドコーナーに張り付いて奥の方にあるお買い得品のコーナーに目もくれないのはどういうわけかと尋問したくなったが、ここで揉めているところを見せると店員さんに足元を見られると思い、余裕のあるジェントルハズバンドの振りをして椅子に腰掛け、「うん、それは似合うね」とか「少し硬い感じかな」などとうわ言のように空虚な批評をした。

約一時間ほどの買い物であったが、この店の内部事情が大体つかめた。
おそらく店は先代(あるいは先々代)から続く地元の老舗なのだが、最近になって方向転換したのだと思われる。そのかじ取り役は、きっと気取りすぎギリギリのファッションや立ち振る舞いが強烈な印象を残してくれた、若旦那であろう。

おそらく僕より年下の若旦那は「東京帰りです」的な濃厚なオーラをムンムンに発しており、この田舎町ではちょいと浮いている感も無きにしも非ずであった。
後でネットで調べたら店のブログもやっていて、こっちが気恥ずかしくなるような自分撮りの写真などもアップしていた。
だが、そういう部分も含めて応援したくなるようなお店であった。
安売りの看板で客を集めて質の低いサービスを投げうるような量販店とは違い、地元のお客を大事にすると言う姿勢が、家族経営の店の雰囲気から伝わってきて、なんとなく気持ちよかったのである。

会計してくれた店のお母さんはまだクレジットカードの機会の使い方も良くわからず、お客の僕の方が慣れているような感じであったが、それもまた良し、である。

さびれた街にも、大資本にはない心が見つかることがある。
地元の隠れたいい店、大事にしたいものである。


すいせんの花



20:08:21 | woodcat | | DISALLOWED (TrackBack) TrackBacks