June 05, 2007

■仙台野球観戦記

 日曜日に仙台フルキャストスタジアムで交流戦 『楽天×広島』 を見てきた。
 僕は小さい頃から広島カープファン。それに仙台での楽天の試合は一度見てみたいと思っていたので、今回の観戦と相成った。

 さてまずは球場周りの様子からレポート。
 フルキャストスタジアムは改装前にも訪れたことがあるが、以前とはまったく違ったものになっていて驚いた。日本の地方球場という匂いは消え、大リーグ流の 『ボールパーク』 といった趣でとても良い雰囲気だ。入場前に球場の周りをぐるっと歩いてみたが、そこかしこでライブイベントが行われ、フード類のお店も様々ある。このにぎやかさは癖になりそうだ。

球場正面

 弁当を買って球場に入る。ちなみにこの日は広島が対戦相手ということで、僕が入場したカープ側の入り口では全員にお好み焼きの素とおたふくソースを配っていた。ちょっとうれしい。
 球場の中もとても良い感じ。野球場の基本色の濃いグリーンと楽天のチームカラーのエンジ色がいい具合にマッチしている。ボックス席などもあって、それもまたメジャー風。

 野球観戦というと試合が始まるまでや攻守交替の間が退屈だったりするのだが、ほぼすべてのブランクタイムで何らかのイベントが行われるので退屈しない。ちびっ子参加型のイベントも盛りだくさんなのでファミリーにも最適。
 流す音楽も良いし、音響効果も良いので結構ノレる。メジャーの中継などを見ていると場内のBGMに合わせてダンスする観客の様子がよく映し出されるが、仙台でもいずれ踊りだす観客が出てくるのではないだろうか。実際僕は踊りたい。しかしBGMのリズムを無視して選手の応援マーチを合唱していた応援団を見ていると「まだまだか…」とも思ったりして。
 僕は正直、最下位を独走する楽天の試合にドヤドヤと集まって応援している仙台の方々をテレビで見て「仙台市民よ、君ら何がそんなに楽しいんだ…」と思っていたが、このスタジアムの雰囲気なら頷ける。ましてや今季はそこそこ勝っているし、野球観戦も楽しいはずだ。

 しかしあくまで僕の感想レベルの話だが、気になった部分もある。
 ひとつは球場内の広告。多すぎる。スコアボードの余白がびっちりと広告で埋め尽くされている様は、まるでアフィリエイトとワンクリック広告を貼りまくった安サイトのようである。またせっかくレンガ調の壁にRECAROのシートで外国的なムードを演出したベンチも、貼りまくられた広告のせいでそのほとんどが視界から消されてしまっている。広告が大事な収入源だとしても、スタジアムのムードを演出することにこだわるならその見せ方も考えてもらいたいものである。もちろん広告自体が絵になるようなデザインなら問題ないのだろうが…。

 それから球場の売り子さんたちがまだまだ未熟。東京ドームあたりの手だれの者たちと比べても客とのコミュニケーションスキルが全然足りないのは明らか。たとえ地元の素朴な学生アルバイトだとしても、スタッフユニフォームを身に着ける以上、君らはお客に夢を売る一員なのだ。そういう気持ちを持ちなさい。ひまがあったらカリスマ新幹線販売員のおねえさんの本を読んだり講演会を聞きにいったりするとよい。弁当は眼で売るもの。らしいよ。

 それとついでに、チーム名に『東北』の名を冠するならもっと東北他県での試合を増やしたり、ほか五県の特色も出したりしないといけない。今年は宮城以外のゲームは盛岡と福島でそれぞれ一試合のみ。諸事情あったとしても、参入の時は東北六県を味方につけておきながら仙台圏のみで採算が取れそうになれば後はイナカモンに用はないぜ、みたいな印象も無きにしもあらず。東北全てが仙台一都市で集約できると思ったら大間違いなのだが。

 とまあ、いろいろ苦言まで呈してしまったが、前半に書いたようにフルキャスト・スタジアムでの野球観戦は大変楽しい。このままの路線を発展させていけば極上のベースボール・アミューズメントパークになるのではないかと、楽しみである。

 さて肝心の試合。
 カープの先発は黒田投手だった。黒田投手といえば昨年のFA取得の際に「他のチームのユニフォームを着て広島のバッターに投げている自分は考えられない」という名セリフを残し、FA制度では他球団に人材を取られるだけのカープというチームに残留した、誇り高き大エースである。カープは前日まで4連敗していただけに彼の気合は並々ならぬものがあり、試合前のウォームアップの時から、見ていると圧倒されそうなほどだった。
 ちなみに僕は同じ広島の前田選手がFAを取得し、権利を行使するのかを取材陣に聞かれた時に答えた「忘れとったわ」の一言(もちろん残留)もしびれる名言だと思っている。

 楽天選手たちについても触れておこう。
 楽天が初めてプロ野球に参入した三年前、楽天は山形にも試合にやってきた。しかし当時のチームの惨状は既知のとおり。試合前の練習からエラーを連発、動きも緩慢でやる気も気合も微塵も感じさせないチームを見てスタンドのそこかしこから「これじゃあ酒南(さかなん:山形県内の高校野球の強豪校)の方が強いべぇ〜」という声が聞こえ、確かに僕もひどくがっかりした。弱いのは仕方ない。でもあんたらプロじゃないか、と。

 しかしこの日の楽天の選手たちは皆プロとしてのたたずまいを備え、見るに値する試合をこなしていた。今年は勝率五割もちらほら、順位も3位あたりにいたりする。これなら金を払って楽しめる。
 そしてやはりミスター・イーグルス(と呼ばれているらしい)の磯部選手の存在感は抜群だった。上述の山形での試合の時も、磯部選手のみが複数安打を放って気を吐き、山形の皆さんにも楽しんでもらいたい、という態度を見せてくれていたのがとても印象に残っている。黒田と磯部。この二人が対峙しているのを見ているだけでも、「ああ、いいなあ〜」と思えるのだ。

 ゲームの結果は黒田投手の完封で広島が勝利。ここぞという場面では150km/hを超える速球で打者をねじ伏せる黒田のピッチングはさすがと唸るほかない。ひょっとすると他球団、あるいはメジャーに行ってしまったかもしれない彼をこうしてまた見ることが出来るのは、カープファンにとってこの上ない喜びであることを改めて感じた。

 黒田投手や前田選手。彼らが現役でいるうちに、もう一度カープに優勝してもらいたいと強く思う。同じく磯部選手にも、何とか楽天が優勝する瞬間を味わってもらいたいと思う。

 何かを犠牲にしてファンのため、チームのためにプレーする選手にとって優勝は何よりのご褒美だ。そしてそういう瞬間は必ず訪れるものなんだとみんなで共感しあえるのが、スポーツの良さである。

以上、フルキャストスタジアムからレポートでした。


黒田 VS 磯部



22:44:22 | woodcat | | DISALLOWED (TrackBack) TrackBacks